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微生物学:無毒性表現型の発現による協力的毒性の安定化

Nature 494, 7437 doi: 10.1038/nature11913

病原体は集団行動を介して宿主に感染することが多い。つまり、病原体集団は、増殖を促進する化合物あるいは毒性因子を分泌したり、宿主での定着を促進する宿主反応を引き起こしたりするのである。このような行動は、集団行動に寄与せずにその恩恵を受ける変異体の増加に対し脆弱である。このような行動が進化的に安定していられる仕組みはよくわかっていない。我々は、腸内病原菌であるSalmonella enterica serovar Typhimurium[以後、ネズミチフス菌(S. typhimurium)と記載]を用いて、この疑問に取り組んだ。ネズミチフス菌は、炎症を誘導するように宿主を操作し、その結果、共生微生物叢に打ち勝つ。特に、宿主の操作に必要な毒性因子は、双安定なやり方で発現され、結果として、毒性遺伝子を発現する増殖の遅い部分集団と、表現型的には無毒性の増殖の速い部分集団が生じることは重要である。本論文では、遺伝学的には同一であるが表現型的には無毒性の部分集団の発現が、この病原体の毒性の進化的な安定に不可欠であることを示す。我々は数理モデル化、実験的進化および競合実験を組み合わせて用い、宿主内での進化により、遺伝学的に無毒性で増殖の速い変異体が出現することを明らかにした。これらの変異体は、炎症に寄与せずに、炎症を利用するディフェクター(defector)である。野生型ネズミチフス菌で開始した感染実験では、ディフェクターの出現頻度はごくゆっくりとしか増加しない。表現型的に無毒性の部分集団のサイズが小さくなるよう遺伝学的に操作されたネズミチフス菌株では、ディフェクターはより迅速に集団サイズを拡大し、炎症は時期尚早に停止して、ネズミチフス菌は迅速に腸から除去される。今回の結果は、ネズミチフス菌による宿主操作は協力的形質であり、無毒性のディフェクターの増加に対し脆弱であることを示している。つまり、ディフェクターと同程度の速さで増殖する表現型的に無毒性の部分集団の発現によってこの過程は減速され、その結果、毒性の進化的な安定が促進される。これは、毒性遺伝子の双安定な発現が協力的毒性の安定化に重要な役割を果たしていることを示しており、また、この研究が病原体の抑制の新しい手法につながる可能性がある。

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