進化:寄生バチNasoniaの行動解析と遺伝的解析から性フェロモンの進化に関する手がかりが得られる
Nature 494, 7437 doi: 10.1038/nature11838
性フェロモンは、有性生殖をする多くの生物のコミュニケーションにきわめて重要な役割を果たしている。したがって、種分化には多くの場合、適切な配偶相手を探し出して認識することを可能にする性フェロモンの多様化が伴う。現在の理論では、化学シグナルはその受信者による安定化選択を受けており、それにより受信者がシグナルの完全性を維持していると考えられている。現在見られるような非常に多様な性フェロモンがいったいどのように進化してきたのかは、ほとんど解明されていない。今回我々は、カリバチで新たに進化したフェロモン表現型の遺伝学的特性を解明し、また行動実験から、すでに確立していた発信者–受信者の系内で新たなフェロモン成分の進化がどのように起こったかを示唆する結果を得た。雄のキョウソヤドリコバチ(Nasonia vitripennis)が進化させた、ある新しいフェロモン化合物は、既存のフェロモンとの相異点が立体化学的性質だけであることがわかった。比較行動研究により、この新しいフェロモン表現型が進化した際に、同種の雌はこれに中立的に反応したことが明らかになった。遺伝子マッピングと遺伝子ノックダウンから、3つの強く連鎖した遺伝子からなるクラスターが、この新しいフェロモン表現型の生じる原因であることが判明した。これらのデータから示唆されるように、新しいフェロモン化合物は、最初は知覚されないままでいることにより、受信者による負の選択を受けずに済み、新しいフェロモン表現型への選好性を備えている受信者がいなくても、発信者集団内で存続できる。今回の結果から、性フェロモンの多様化の原因となる進化の仕組みについて有用な新しい手がかりが得られた。またこれらの結果が示すように、新しいフェロモン化合物の遺伝的基盤は単純なものである可能性があり、そのため、新しい化合物が集団内に十分長い時間存続できて、受信者がこれを利用するための化学感覚を適応進化させることができるのかもしれない。

