Letter
生化学:生物活性のある薬草から製造した薬剤の、ATPによるヒトtRNA合成酵素上への捕捉
Nature 494, 7435 doi: 10.1038/nature11774
フェブリフジンは、漢方薬の常山の原料であるジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga Lour.)の活性成分で、この漢方薬はほぼ2000年前からマラリアによる発熱の治療に用いられてきている。フェブリフジンのハロゲン化誘導体であるハロフジノン(HF)は、がんや繊維症の治療薬候補として臨床試験が行われている。最近、HFはヒトのプロリルtRNA合成酵素(ProRS)の阻害により、電荷を持たないtRNAの細胞内蓄積を引き起こしてアミノ酸応答経路を活性化し、TH17細胞の分化を阻害することが報告された。予想に反して、この阻害には加水分解されていないATPの存在が必要である。今回我々は、ATPがHFの2つの部分をヒトProRS上に直接固定してその配向を決め、HFの一部分は結合プロリンを模倣し、もう一方が結合したtRNAの3′末端を模倣するという異例の構造(分解能2.0 Å)について報告する。したがって、HFはProRS上の2つの基質結合部位を同時に占拠するという、新規な種類のATP依存性阻害剤である。さらに、我々の構造からフェブリフジンはマラリア治療の際に、これと同じような機構によって作用していると考えられる。また、2つの部位をモジュールとして標的化するHFの働きが今回解明されたことで、同様の阻害剤の基質による捕捉は一般的な機構であり、ほかの合成酵素にも適用する可能性が出てきた。

