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構造生物学:風疹ウイルスタンパク質E1の結晶構造から得られる、その機能と進化に関する考察

Nature 493, 7433 doi: 10.1038/nature11741

風疹ウイルスは、小児では麻疹に似た比較的軽い病気を引き起こすが、子宮内での感染は重篤な先天性の障害につながることがある。だが、その三次元構造についてはほとんど知られていない。風疹ウイルスは、蚊が媒介するアルファウイルスと同じファミリーに属するが、さまざまな点で麻疹や耳下腺炎の原因ウイルスのようなエアロゾル空気伝染するヒトウイルスのほうに似ている。先天性風疹症候群の発生率は、三種混合MMR(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹)生ワクチンの使用によって西側諸国では低下したが、開発途上国ではいまだに重大な健康問題となっている。本論文では、風疹ウイルスの主要な抗原であり、このウイルスに対する中和抗体の唯一の標的であるエンベロープ糖タンパク質E1の分解能1.8 Åでの結晶構造を報告する。E1は、受容体結合機能と膜融合機能を持つため、標的細胞への侵入の際に働く主要な因子である。この結晶構造から、エピトープが明らかになり、風疹感染を防ぐ重要な種類の抗体の中和機構が明らかになった。また、風疹ウイルスE1がクラスII融合タンパク質であることも示された。これまでに構造が明らかになっているクラスII融合タンパク質は、節足動物によって媒介されるアルファウイルスとフラビウイルスだけである。さらに、風疹ウイルスE1には金属イオン結合部位を含む広い膜融合表面があり、これはアポトーシスを起こした細胞の細胞膜にあるホスファチジルセリン脂質に結合するTIM(T-cell immunoglobulin and mucin)ファミリーの細胞内タンパク質に似ている。このような特徴は、これまでに結晶化されたどの融合タンパク質にも見つかっていない。構造の比較から、アルファウイルスとフラビウイルスは異なったウイルスファミリーに属するにもかかわらず、それらのクラスII融合タンパク質は、風疹ウイルスE1に対してよりも、お互いどうしのほうがよく似ている。このことは、節足動物媒介性ウイルス(アルボウイルス)は脊椎動物と節足動物での増殖を交互に繰り返すことによる制約が加わるため、進化がより控えめになっていることを示している。これに対して、完全にヒトを宿主とする風疹ウイルスにはこのような制約はなく、かなりの変化を遂げてルビウイルス属の唯一のウイルスとして独自の生態学的地位を占めるようになったものと思われる。

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