工学:分子スピンメモリデバイス用に界面操作されたテンプレート
Nature 493, 7433 doi: 10.1038/nature11719
量子情報のストレージ、センシングや計算を行うための分子スピン状態の利用は、次世代のデータストレージや通信デバイスとの関連から大きな関心を呼び起こし、多機能の分子スピントロニクスを開発する道が開かれている。このようなアイデアは広範囲に研究されており、ストレージや論理演算の実現に向け、単一分子磁石や金属イオン分子、窒素空孔欠陥がスピンを運ぶ局在中心として用いられている。しかし、これら分子のスピン中心間の電子結合は比較的弱く、そのため量子メモリレジスターの構築は難問となっている。この点で、フェナレニルなどの不対スピンを持つ非局在化炭素系ラジカル種が有望視されている。これらフェナレニルの一部分はグラフェンの断片と見なすことができ、3個のベンゼン環を融合して形成され、開殻系のクラスに属する。これら分子のスピン構造は光や電場、磁場などの外部刺激に応答し、ここからスピンメモリや論理演算を行うための新しいスキームがもたらされる。本論文では、そのような分子をテンプレートとする分子デバイスを構築した。このテンプレートは、強磁性体表面とのハイブリッド化と磁気交換相互作用の結果として、界面でのスピンの移動操作を行う。このデバイスは室温付近で20%以上という予期せぬ界面磁気抵抗を示した。さらに、強磁性体表面上で明瞭な磁気ヒステリシスを有する、ナノスケールの磁性分子が形成されることも実証された。このような、吸着した磁性分子に対しての独立したスイッチングは、強磁性体との強い磁気結合のため単一分子磁石では成功していなかった。今回の知見は、化学的に操作しやすいフェナレニル系分子が、分子スケールの量子スピンメモリやプロセッサを構築するための実行可能でスケーラブルなプラットフォームとして技術開発に使用できることを示唆している。

