考古:紀元前6千年紀の北ヨーロッパでチーズが製造されたことを示す最古の証拠
Nature 493, 7433 doi: 10.1038/nature11698
酪農の導入は初期農業のきわめて重要な段階の1つであり、乳製品は、先史時代の農耕民および土器を用いる後期狩猟採集民の食生活の重要な要素として、急速に取り入れられていった。乳加工、特にチーズの製造は、きわめて重要な進展であったと考えられる。というのも、こうした加工によって先史時代初期の農耕民は、腐敗せず輸送可能な形で乳製品を保存できただけでなく、乳をより消化しやすい形にできたためである。アナトリア北西部の紀元前7千年紀の遺跡から出土した土器に乳の残滓が大量に発見されたことは、乳加工を示す最古の証拠であるが、その実行形態を詳らかにすることはできなかった。注目されるのは、紀元前6千年紀のヨーロッパ温帯域の新石器時代前期の遺跡で、小さな穴が多数開けられた土器片が発見され、類型学的に「チーズ製造用の水切り道具」だと解釈されたことだが、乳加工との直接的な関係は明らかになっていない。土器内に保存された有機物残渣から、乳に含まれる主要な脂肪酸のδ13CおよびΔ13C値に基づいて、新石器時代に近東およびヨーロッパ南東部、アフリカ北部、デンマークならびにイギリス諸島で、乳の初歩的利用が行われていたことを示す直接的な証拠が得られている。今回我々は、これと同一の方法を用いてこし器あるいは水切り用道具の機能を調べ、それらが乳加工に使われていたことを裏付ける直接の化学的証拠を得た。形状が現代のチーズ用水切りに近いこの種の特殊な容器には大量の乳脂肪が存在しており、これらの容器が乳糖を含有するホエー(乳清)から脂肪分に富むカード(凝乳)を分離するのに用いられていたことが強く裏付けられた。この新たな証拠は、乳製品の加工、特に先史時代の乳糖不耐性を持つ農業共同体で低乳糖乳製品を製造するのに土器が重要であったことを強調している。

