進化:Peromyscus属マウスの複雑な巣穴の進化には別々の遺伝的モジュールが複数関与している
Nature 493, 7432 doi: 10.1038/nature11816
自然界で見られる行動の複雑な差異の進化に遺伝的特性がどのように影響しているのかについては、形態的形質に比べてあまりよくわかっていない。遺伝性の行動に自然に生じる多様性に対して環境がどのように影響するのかは明らかになっておらず、また、複雑な行動の差異が、1個で行動の多くの側面に影響する遺伝的変化がごく少数あることで進化するのか、それとも、組み合わされた際に行動に複雑性をもたらす遺伝的変化がいくつか蓄積することで進化するのかも不明である。今回我々は、自然界のハイイロシロアシマウス(Peromyscus polionotus)が長い入口および避難トンネルのある複雑な巣穴を掘り、巣穴の長さは全個体群を通じて一定であるが、巣穴の深さは土壌の組成によって変化することを明らかにする。この巣穴の構造は、姉妹種であるシカシロアシマウス(P. maniculatus)の小さくて単純な巣穴と対照的である。実験室の飼育条件下で調べると、いずれの種も自然界での穴掘り行動を再現した。この2種を遺伝的に交雑させたところ、ハイイロシロアシマウスの派生的な巣穴が優性であり、この巣穴が複数の遺伝的変化の追加によって進化したことが明らかとなった。第一世代の戻し交雑マウスが掘った巣穴では、入り口用トンネルの長さと避難トンネルの存在とが結びつかない場合があり、この2つの形質がモジュール型であることが示唆される。量的形質遺伝子座の解析からも、トンネルの長さは、少なくとも3か所の独立した遺伝子領域に影響を受ける1つの複合的形質として分離され、一方で避難トンネルの存在は1か所の遺伝子座のみと関連することが示された。今回の結果を総合すると、複雑な行動(本研究の場合では典型的な「延長された表現型」)は、それぞれが別々の行動モジュールに影響を及ぼす複数の遺伝的変化によって進化する場合があることが示唆される。

