Letter
神経生物学:Prkczヌルマウスが示す正常な学習および記憶機能
Nature 493, 7432 doi: 10.1038/nature11803
プロテインキナーゼM-ζ(PKM-ζ)は、脳においてのみ発現している構成的に活性な非典型的プロテインキナーゼCで、長期記憶の維持に関与するとされている。PKM-ζが記憶の維持に役割を果たしていることを裏付ける研究のほとんどは、ミリストイル化ZIP(zeta inhibitory peptide)やケレリトリンのようなPKM-ζ阻害性薬物を使っている。今回我々は遺伝学的手法を用いて、Prkcz遺伝子のエキソン9を標的として、プロテインキナーゼC-ζ(PKC-ζ)とPKM-ζの両方を欠失したマウス(Prkcz−/−マウス)を作成した。このPrkcz−/−マウスはケージ内の環境でも、運動機能と知覚の基準検査でも正常な行動を見せたが、不安様行動は減少した。特に興味深いのは、Prkcz−/−マウスでは、合図による恐怖条件付け試験、新奇物体認知試験、物体位置認識試験、コカインによる条件付け場所嗜好性試験あるいは運動学習において、野生型の同腹仔と比較して、学習や記憶に異常が見られなかったことである。Prkcz−/−マウスの側坐核にZIPを注入すると、コカインによる条件付け場所嗜好性が低下した。in vitroで、ZIPとスクランブルドZIPはPKM-ζ、PKC-ι、PKC-ζを阻害し、その阻害定数(Ki)はほぼ同じだった。ケレリトリンによるPKM-ζの阻害は弱かった(Ki = 76 μM)。これらの知見はPKM-ζの喪失がマウスの学習や記憶を障害しないことを示しており、ZIPにはPKM-ζが存在しない場合にも報酬記憶を消去する作用があることがわかった。

