医学:PPM1Dのモザイク変異は乳がんおよび卵巣がんの素因と関連している
Nature 493, 7432 doi: 10.1038/nature11725
塩基配列読み取り技術の向上によって、ありふれた疾患に希少な遺伝的変異が果たす役割を調べることがかつてないほど容易になった。しかし、研究設計、データ解析および追試に関しては、かなり難しい問題がまだ残っている。本研究では、DNA修復に関連する507個の遺伝子について1,150サンプルをプールして行った次世代塩基配列解読と、タンパク質短縮型変異(protein-truncating variant、PTV)に注目した分析、そして13,642人に対する大規模塩基配列解読の症例対照反復実験を用い、p53誘導性タンパク質ホスファターゼであるPPM1Dに起きたまれなPTVが、乳がんと卵巣がんの素因と関連していることを示す。PPM1DのPTV変異は7,781の症例中25例で見られたのに対して、対照群では5,861人中1例であり(P = 1.12×10−5)、6,912人の乳がん患者では18例の変異(P = 2.42×10−4)、1,121人の卵巣がん患者では12例の変異(P = 3.10×10−9)となっている。同定されたPPM1D PTVはいずれも、リンパ球のDNAにモザイク状に存在しており、この遺伝子の最終エキソンの370塩基対の領域内、つまりホスファターゼ触媒ドメインのカルボキシ末端側にクラスターを形成していたことは注目される。機能解析により、これらの変異は電離放射線曝露に応答してp53の抑制を亢進することが明らかになり、これらの変異型対立遺伝子が高活性型のPPM1Dアイソフォームをコードしていることが示唆された。したがって、これらの変異は未成熟な短縮型タンパク質を生じる原因となるが、この種の変異でよく見られる単純な機能喪失型の影響が出ることはなく、おそらく機能獲得型の影響を及ぼしている。今回の結果は、乳がんおよび卵巣がんのリスクの検出や管理にかかわってくる。もっと一般的には、これらのデータは、希少な遺伝的変異やモザイク型の遺伝的変異がありふれた疾患に果たす役割と、そうした変異を同定する際の塩基配列解読法の使用について、新たな考察をもたらすものである。

