細胞:RNAポリメラーゼII–TFIIB初期転写複合体の構造と機能
Nature 493, 7432 doi: 10.1038/nature11715
基本転写因子(TF)IIBはRNAポリメラーゼ(Pol)IIによる転写開始に必要で、そのBリーダーエレメントが伸びてPol IIの活性中心の溝に入り込む。Pol II–TFIIB複合体の低分解能で解かれた構造によって、TFIIBがDNAの動員にどのような働きをするかは示されたが、この構造には核酸とBリーダーエレメントの半分が含まれていなかったため、TFIIBのほかの機能についてはわからないままだった。本論文では、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のPol II–TFIIB複合体の分解能3.4 Åでの結晶構造と、これに加えて鋳型DNAと6ヌクレオチドのRNA産物をも含んだ初期転写複合体の結晶構造を報告する。これらの構造から、Bリーダーやタンパク質と核酸との相互作用の全容が明らかになり、機能データと総合することにより、転写開始のより全面的な解明につながる。TFIIBはポリメラーゼの溝を部分的に閉じてDNAの位置を決め、DNAが開くのを助ける。Bリーダーは活性部位にまでは達しないが、上流でDNA鋳型鎖に結合し、開始配列の認識と転写開始部位の位置決めを助ける。TFIIBは活性部位の残基を再編成し、触媒作用を担う金属イオンBの結合を誘発し、最初のRNA合成をアロステリックに促進する。TFIIBは次いで、生じるDNA–RNAハイブリッド二本鎖がねじれるのを防ぎ、RNA合成が妨げられないようにする。RNA鎖は6ヌクレオチドより長くなるとDNAから離れ、Bリーダーのループの働きで排出溝へと誘導される。RNAが12〜13ヌクレオチドにまで伸長するとTFIIBにぶつかり、これがTFIIBの解離と伸長複合体形成を引き起こす。真核生物RNAポリメラーゼと古細菌RNAポリメラーゼはすべて、TFIIBに似た因子を使っており、また細菌の開始因子σもTFIIBに似たトポロジーを持ち、位置、電荷、機能の点でBリーダーループに似たループ領域3.2を含むことから、これと同様の機構が、あらゆる細胞による転写で働いている可能性がある。したがって、TFIIBとこれに相当する因子は、DNAポリメラーゼとRNAポリメラーゼを分けている2つの基本的な性質、すなわちプライマー鎖を必要としない合成開始と鋳型からの産物分離の両方に関与しているらしい。

