気候:気候変動の緩和に必要な費用の確率的な見積もり
Nature 493, 7430 doi: 10.1038/nature11787
10年以上にわたって、地球温暖化を2°C以内に維持するという目標は、国際的な気候に関する議論における重要な論点だった。これに応えて、複数のシナリオ研究が公表され、この目標を達成するのに必要な費用が見積もられている。これらの見積もりの作成はいまだに難問である。それは、比較的よくわかっているがあまり定量化されていない不確定要素が存在することが大きな理由であり、また複数の分野にわたる科学的知識の統合に限界があるためである。一方、統合的評価の分野では、科学技術的な不確定性や社会経済的な不確定性が低炭素シナリオとそれに伴う費用に与える影響が詳細に見積もられている。また、気候モデルの分野では、何年もかけて、温室効果ガスの放出に対する地球システムの地球物理学的な応答の理解を深めてきた。この地球物理学的な応答は、依然として緩和シナリオの費用における主な不確定要素であるが、ほかの不確定要素の見積もりとの統合は、基本的な方法、すなわち平衡状態においてでしか行われていない。本論文では、地球物理、技術、社会、政治の4つの要因の不確定性を考慮し、過渡的な全球気温上昇をある特定の値以下に制限することで発生する費用の分布を作成し、2つの研究分野の間の溝を埋める。その結果、緩和を遅らせる政治的な選択肢が、費用とリスクの分布に最も大きな影響を与え、地球物理学的な不確定性、将来のエネルギー需要に影響を与える社会的要因、温室効果ガス排出削減の選択肢の実現可能性を取り巻く技術的な不確定性がこれに続くことが見いだされた。ここで得られた気温リスクと緩和費用に関する知見から、さまざまなシナリオに対して、全球の気温上昇が2°C、あるいは3°Cや1.5°Cなどほかの値を超えるリスクを減らす際の、緩和費用、エネルギー需要、地球規模の行動の時機の相対的な重要性が明らかになるため、政策決定のための重要な情報が得られる。

