免疫:Ca2+は脂質の電荷特性を変化させることによってT細胞受容体の活性化を調節する
Nature 493, 7430 doi: 10.1038/nature11699
イオン性のタンパク質と脂質の間の相互作用は、膜受容体、イオンチャネル、インテグリンやその他多くのタンパク質の構造と機能にとって非常に重要である。しかし、このような相互作用の調節機構についてはほとんど明らかになっていない。今回我々は、Ca2+が陰イオン性のリン脂質に直接結合し、それによって膜タンパク質の機能を調整することを示す。適応免疫に重要な膜受容体であるT細胞受容体(TCR)–CD3複合体の活性化は、正に荷電したCD3ε/ζ細胞質側ドメイン(CD3CD)と負に荷電したリン脂質との細胞膜中でのイオン性相互作用によって調節されている。静止期T細胞では、重要なチロシンは膜の中に埋まっており、リン酸化からおおむね守られている。抗原刺激を受けたT細胞でCD3CDが膜から解離する仕組みは明らかになっていない。単一のTCRに抗原が会合しただけでCa2+流入が引き起こされ、TCR周辺のCa2+濃度は、平均的な細胞質Ca2+濃度よりも高くなる。生化学的実験、生細胞蛍光共鳴エネルギー移動実験およびNMR実験により、Ca2+濃度の上昇が膜からのCD3CDの解離とチロシン残基の溶媒への曝露を誘導することが示された。その結果、CD3のチロシンリン酸化がCa2+流入によって大きく増強された。さらに、Ca2+チャネル欠損T細胞は、野生型細胞と比べて刺激後のCD3のリン酸化レベルが大幅に低いことがわかった。CD3リン酸化の促進に対するCa2+の影響が主にこのイオンの電荷によるものであることは、Ca2+を非生理的なイオンであるSr2+と置き換えても同じフィードバック効果が生じることによって実証される。また、31P NMR分光測定によって、Ca2+が生理的濃度で陰イオン性リン脂質のリン酸基に結合し、それによってリン脂質の負の荷電が中和されることがわかった。このCa2+による調節経路は、CD3のリン酸化の開始ではなく、CD3のリン酸化を増幅し維持する正のフィードバック効果を持ち、外来抗原に対するT細胞感受性を増強すると考えられる。したがって我々の結果は、Ca2+によるT細胞活性化という新規な調節機構を明らかにしており、この機構には脂質の性質の直接的な変化がかかわっている。

