細胞:SAPKによる複製と転写の協調制御はゲノムの完全性を守っている
Nature 493, 7430 doi: 10.1038/nature11675
細胞は、環境変化や細胞外からのシグナルを受けると、遺伝子発現の著しい変化にさらされることになる。転写経路と複製経路の食い違いを防ぎ、組み換えが起こるのを避けるには、複製を行いながら高レベルの転写に対処することが不可欠である。細胞が浸透圧ストレスにさらされると、S期のさなかであっても、ストレス活性化プロテインキナーゼ(SAPK)Hog1によって何百ものストレス応答性遺伝子が迅速に誘導される。今回我々は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では単一のシグナル伝達分子Hog1が浸透圧ストレスに応じて複製と転写の両方を協調させることを明らかにした。Hog1は、複製複合体の成分であるMrc1に結合してリン酸化する。このリン酸化が起こるのは、DNA損傷の際にMec1がリン酸化の標的とするのとは異なる複数の部位である。Hog1によるMrc1のリン酸化によって、Cdc45の結合が妨げられるために初期複製起点および後期複製起点の発火が遅れ、それとともに複製複合体の進行速度も遅くなる。Hog1によるMrc1の調節は、Mec1やRad53とは全く無関係に起こる。MRC1のリン酸化できない変異対立遺伝子(mrc13A)を持つ細胞ではストレスにさらされても複製が遅れることがなく、転写に伴う組み換えが増え、ゲノムの不安定化が起こり、Rad52によるフォーカス形成が増加する。これに対し、ヒドロキシ尿素やメチルメタンスルホン酸の存在下では、mrc13AはRad53を誘導して生存率を高める。したがって、Hog1とMrc1はDNA損傷チェックポイントとは別個の新規なS期チェックポイントを構成しており、これによって真核細胞はDNA複製と転写の摩擦を避けられる。これがない場合は、複製と転写の両方が時間的に重なって起こり、ゲノムの不安定性につながるおそれがある。

