Letter
構造生物学:内耳の機械刺激伝達に不可欠の力伝達型カドヘリン結合の構造
Nature 492, 7427 doi: 10.1038/nature11590
聴覚と平衡感覚では、内耳の有毛細胞を使って機械刺激が電気的シグナルに変換される。音波や頭部の動きから生じる機械力は、有毛細胞感覚糸(tip link)により有毛細胞の信号変換チャネルへ伝えられる。感覚糸は、プロトカドヘリン15とカドヘリン23として知られる2つの特殊なカドヘリンにより形成される細いフィラメントである。これら2つのタンパク質は、遺伝性難聴に関係しており、Ca2+に依存して不動毛先端間での相互作用にかかわる長い細胞外ドメインを特徴としている。しかし、この複合体の分子構造は知られていなかった。今回我々は、結晶学実験と分子動力学シミュレーション、結合実験を組み合わせて、プロトカドヘリン15とカドヘリン23をつなぐ結合の特徴を調べた。各タンパク質の最もアミノ末端近くにある2つのカドヘリンリピート(細胞外カドヘリンリピート1と2)が相互作用して、重なり合った逆平行ヘテロ二量体を形成するという、独特なカドヘリン相互作用機構が見いだされた。シミュレーションからは、感覚糸のこの結合は、有毛細胞で生じる力に耐えるのに十分な機械的強度があると予測される。また、この複合体は、Ca2+を除去すると、Ca2+がないカドヘリンリピートの屈曲が増大することにより不安定化することがわかった。さらに、構造研究と生化学測定によって、難聴にかかわる突然変異が感覚糸の機能を破壊する分子機構を調べた。まとめると、我々の結果は有毛細胞での感覚伝達の分子機構を解明し、また組織や臓器の形態形成、神経接続やがんにかかわっている大きなタンパク質ファミリーであるカドヘリンの新たな相互作用機構を明らかにしている。

