Letter

合成生物学:単一細胞内で階層化した複数の論理ゲートから構築された遺伝的プログラム

Nature 491, 7423 doi: 10.1038/nature11516

遺伝的プログラムは、環境センサーを統合し、シグナル処理アルゴリズムを実行し、発現動態を制御する機能を持つ。こうしたプログラムは、デジタル論理から動的回路までさまざまな演算を個別に実行する集積遺伝子回路によって構成されており、代謝ネットワークの処理制御の実行や人工組織の空間的分化の調節など、多様な細胞工学的用途に使われている。重大な制約の1つは、こうした回路は細胞の限られた容積の中で発生する生化学的相互作用に基づいているため、プログラムの大きさが少数の回路に限定されていることである。今回我々は、部分的マイニング法および指向性進化の手法を使って、大腸菌(Escherichia coli)の内部に転写のANDゲートのセットを構築した。それぞれのANDゲートは2つのプロモーター入力を統合し、1つのプロモーター出力を制御する。こうすることで、上流回路の出力プロモーターを下流回路の入力プロモーターとして働かせて、ゲートの階層化が可能になる。各ゲートは1つの転写因子からなり、これは出力プロモーターを活性化するために第二のシャペロンタンパク質を必要とする。活性化因子とシャペロンの組み合わせは、さまざまな細菌株のIII型分泌経路から多数見つかる。指向性進化を適用することで、回路のダイナミックレンジおよび直交性を増強できる。これらのゲートは、接続をさまざまに並べ替えてプログラムを作り上げることができる。最大のものは、4つの誘導系を統合して3つの回路で構成された4入力ANDゲートであり、必要な調節タンパク質は11種類である。プログラム全体の挙動をとらえるには、個々のゲートの動作を測定すれば十分である。階層化された回路によく見られる「遅延(故障)による出力のエラー」の問題は観察されなかった。本研究は、直交性論理ゲートの階層化の達成を実際に示したものであり、この設計戦略は、単一細胞内での大型集積回路の構築を可能にすると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度