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気候:広範囲のガスハイドレートの不安定化を引き起こした近年のメキシコ湾流の変化

Nature 490, 7421 doi: 10.1038/nature11528

メキシコ湾流は、暖水をメキシコ湾から北大西洋と北極海へ輸送することによって、北半球の気候を調節する海流である。メキシコ湾流の変化によって、海底下に埋蔵されている数百ギガトンの凍ったメタンハイドレートが溶けて、メタンガスへ変わり、斜面崩壊やメタン放出の危険性が増大する可能性がある。メキシコ湾流が時間とともにどのように変化し、その変化がメタンハイドレートの安定性にどの程度の影響を与えているかは明らかになっていない。本論文では、地震データと熱力学モデルを組み合わせて、メキシコ湾流に関係する海洋中層の水温の近年の変化によって、北アメリカ大陸縁辺域の広い帯状の海域に沿って存在するメタンハイドレートが急速に不安定化していることを示す。ハイドレートの不安定化が活発な領域は、少なくともアメリカ大陸東岸縁辺域の10,000 km2に及んでおり、キロメートルスケールの斜面崩壊が起こりやすい領域に存在する。従来の仮説的研究では、海洋中層の水温が5 °C上昇すると、暁新世/始新世境界温暖化極大期(PETM)のような極端な地球温暖化事象を説明するのに十分な量のメタンが放出され、広範囲にわたって海洋の酸性化を引き起こす可能性があると推測されていた。我々の解析は、過去約5000年以内のメキシコ湾流の流れか水温の変化によって、北大西洋西部縁辺域を最大で8 °C温暖化し、2.5ギガトン(PETMを起こすのに必要な量の0.2%)のメタンハイドレートが不安定化していることを示唆している。この不安定化は、数百キロメートルの縁辺域に沿って拡大し、数世紀にわたって継続する可能性がある。北大西洋西部縁辺域が海流変化を経験する唯一の領域であるとは考えにくい。したがって、2.5ギガトンという不安定化しつつあるメタンハイドレートの我々の見積もりは、現在地球上で不安定化しているメタンハイドレートのごく一部にすぎない可能性がある。放出されたメタンの海洋から大気への輸送、ひいてはその気候への影響については不確かなままである。

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