Letter

進化:カンブリア紀前期の節足動物の複雑な脳および視葉

Nature 490, 7419 doi: 10.1038/nature11495

神経系は、主要な節足動物群どうしの進化的類縁関係を明らかにするうえで基本的なデータ供給源となる。化石節足動物では、神経組織が保存されている例がきわめて少ない。そのため、カンブリア紀分類群の感覚および運動特性の推定は、複眼や付属肢表面の感覚子などの外観的特徴の解釈に限られており、初期に分岐した節足動物は、神経系の進化に関してはほとんど分析されていない。本論文では、5億2000万年前のステム群節足動物Fuxianhuia protensaの化石に、脳および視葉がきわめてよい状態で保存されており、カンブリア紀のものとして知られる中で最も説得力のある神経解剖学的特徴が認められることを報告する。Fuxianhuiaの前大脳は、前方を見る眼につながる3つの入れ子型の視覚中枢の痕跡を示す視葉と接続している。単枝の触角からの神経は中大脳を明示し、それより尾側の一対の太い神経は隣接する後大脳要素を示している。Fuxianhuiaの3つの部分からなるpre-stomodeal脳および入れ子型の視神経網は、現生の軟甲類および昆虫類と共通であり、最古の派生的節足動物の一部がそうした特徴を持っていたことが明らかになる。このFuxianhuiaの脳は、六脚類の祖先が鰓脚類様の節足動物だとする説や、ムカデエビ類とおそらくカシラエビ類が六脚類の姉妹群だとする説を支持する分子解析結果に影響を及ぼす。鰓脚類の単純な脳が昆虫の祖先の脳に近いのかどうか、あるいはそれが二次的な単純化の結果なのかどうかという議論は、化石証拠が存在しないために今まで解決されずにいた。Fuxianhuiaの複雑な脳は神経の特徴に基づく分岐論的分析と一致しており、このことから、鰓脚類は軟甲類様の祖先に由来するが、六脚類および軟甲類と共通する脳中枢の進化的減退や特徴の逆戻りを経たと考えられる。複雑な脳が古い起源を持つことは、さまざまな視覚行動が発達する要因になった可能性があり、この見方は、カンブリア紀前期の複眼が、サイズや分解能の面で現生の昆虫類や軟甲類の複眼と同等であることと整合する。

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