材料:全スケールで階層構造を持つ高性能バルク熱電体
Nature 489, 7416 doi: 10.1038/nature11439
使用された全エネルギーの約3分の2が廃熱として失われており、熱を電気エネルギーに直接、可逆的に変換できる高性能熱電材料が切実に求められている。しかし、熱電材料の実用化は、これまで性能指数ZT(熱力学第二法則に従いカルノー効率を左右する)が低かったため限られている。ナノ構造化により熱伝導率を下げるという最近成功した手法によって、750〜900 Kで1.5〜1.8という過去最高のZT値が実現された。しかし、一般的に望まれているしきい値2には達していない。バルク熱電体中のナノ構造体によって、フォノンスペクトルのかなりの部分で効果的なフォノン散乱が可能になるが、平均自由行程の長いフォノンはほとんど影響を受けない。今回我々は、ナノ構造化された熱電材料のメソスケール構造を制御、微調整することによって、平均自由行程の長い熱伝導フォノンが散乱されうることを示す。したがって、我々は、原子スケールの格子乱れ、ナノスケールのエンドタキシャル析出物からメソスケールの粒界まで、関連するすべての長さスケールで散乱源を階層的に検討することによって、格子熱伝導率の最大限の低減とPbTeの熱電性能の大幅な向上を実現している。我々は、このようなパノスコピックな(広範な階層的)方法で熱伝導フォノンを総合的な長さスケールにわたって散乱させることによって、ナノ構造化を超える成果を得ており、4モルパーセント濃度のSrTeでエンドタキシャルナノ構造化を行ったうえ粉末加工と放電プラズマ焼結でメソ構造化を行ったp型PbTeにおいて、915 Kで約2.2というZT値を実証している。今回のしきい値2を超えるZTの増大は、バルク熱電体のフォノン散乱の制御においてマルチスケール階層構造の役割と必要性を明らかにするものであり、廃熱のかなりの部分を回収する現実的な見通しが得られることを示している。

