遺伝:核内Argonauteは多世代にわたるエピジェネティックな遺伝と生殖細胞の不死性を促進する
Nature 489, 7416 doi: 10.1038/nature11352
エピジェネティックな情報は、新たな世代の始まりに近づくと消去されることが多い。しかし、場合によってはエピジェネティックな情報が、親から子へ受け継がれる場合もある(多世代エピジェネティック遺伝)。この種のエピジェネティック遺伝においてとりわけ顕著な例は、線虫(Caenorhabditis elegans)での二本鎖RNAを介した遺伝子サイレンシングである。このRNA干渉(RNAi)は、5世代以上にわたって遺伝することもある。この現象を解明するために、本研究では、RNAiサイレンシングシグナルの次世代への伝達に異常を示す線虫の遺伝的スクリーニングを行った。このスクリーニングにより、hrde-1(heritable RNAi defective 1)遺伝子を同定した。hrde-1はArgonauteタンパク質をコードしており、Argonauteは二本鎖RNAにさらされた個体の子孫の生殖細胞で低分子干渉RNAと結合する。これらの生殖細胞の核では、HRDE-1は核内RNAi異常(nuclear RNAi defective)経路を構成し、RNAiが標的とするゲノムの遺伝子座のヒストンH3リシン9のトリメチル化(H3K9me3)を指示して、RNAiの遺伝を促した。正常な成長条件下でHRDE-1は、発現している内在性の短鎖干渉RNAと結合し、それらの干渉RNAは生殖細胞での核内遺伝子サイレンシングを指示する。hrde-1変異体や核内RNAi異常の個体では、生殖系列のサイレンシングは世代時間の経過とともに失われる。同時に、これらの個体では配偶子の形成と機能の異常が徐々に悪化し、最終的に生殖不能になる。以上の結果から、Argonauteタンパク質HRDE-1が、生殖細胞の核での遺伝子サイレンシングを指示することで、多世代RNAi遺伝と生殖細胞系譜の不死性を促すことが明らかになった。線虫はRNAi遺伝機構を利用して、以前の世代が蓄積したエピジェネティック情報を新たな世代へ伝達し、重要な生物学的過程を調節していると我々は考える。

