Letter 遺伝:腫瘍ウイルスタンパク質による宿主ネットワークの系統的混乱を利用したがんゲノムの解釈 2012年7月26日 Nature 487, 7408 doi: 10.1038/nature11288 遺伝子型の違いは、病気に対する感受性や抵抗性に大きく影響する。遺伝子型と表現型の関係の解明には、表現型を単にゲノムの個々の差異の結果と見なすのではなく、ネットワーク特性の表れと考える必要がある。ゲノム塩基配列解読が進展し、がんになりやすい素因に関係する多数の生殖細胞系変異と、非常に多くの体細胞ゲノム変化が見つかっている。しかし、これらのデータ群の中で、がんの原因となる「ドライバー」変異と、表面に表れない「パッセンジャー」変異とを区別するのは、いまだに難しい。ヒトウイルスは本来、感染過程で宿主細胞に依存しており、変異によって生じるのとよく似た病的な表現型を誘発することがある。今回我々は、DNA腫瘍ウイルスタンパク質が宿主のインタラクトームやトランスクリプトームに引き起こすネットワークの混乱を系統的に調べることによって、ゲノムの変異と腫瘍ウイルスは類似した仕組みでがんを引き起こすという仮説の検証を行う。その結果得られたウイルスによる混乱に関する統合データは、宿主細胞のネットワークのつなぎ替えを表しており、Notchシグナル伝達やアポトーシスなどのように、がんでうまく働かなくなっている経路を明確に示した。我々は、ウイルスタンパク質の標的となる宿主因子の系統的解析によってがん遺伝子を同定することが可能で、その成功率は、ゲノム機能解析や腫瘍変異の大規模な探索と分類による同定に匹敵することを明らかにする。これらの相補的な方法を合わせると、がん遺伝子同定の特異度が高まる。病原体がコードする遺伝子産物のシステムレベルの研究とゲノミクス手法とを組み合わせることにより、がんの原因となるドライバー遺伝子の優先順位付けが容易になり、ヒトのがんの遺伝的基盤の解明が進展するだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る