Letter 医学:キナーゼ阻害型抗がん剤に対して増殖因子が誘発する耐性は幅広く存在する可能性がある 2012年7月26日 Nature 487, 7408 doi: 10.1038/nature11249 変異により活性化されたキナーゼは、抗がん剤治療の標的として臨床的に有効であることが実証されている。しかし、腫瘍にそのような変異対立遺伝子がある患者でのキナーゼ阻害剤の有効性には、薬剤に対する自然耐性や後天的に獲得された耐性のために例外なく限界が生じる。耐性機構が明らかにされたことで、標的とされたキナーゼが伝達する生存シグナルのほかに、余分な生存シグナルが働くという事象が繰り返し見られることがわかってきた。がん細胞は普通、複数の受容体チロシンキナーゼ(RTK)を発現していて、これらが仲介するシグナルは、下流で共通の重要な細胞生存エフェクター[特に重要なのが、ホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ(PI(3)K)とマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)]に収束する。したがって、腫瘍細胞自身の自己分泌や腫瘍間質からのパラ分泌、全身性生産によってRTK-リガンドのレベルが上昇すると、類似したシグナル伝達出力を持つ発がん性キナーゼを阻害する薬剤に対する耐性が生じることになる。今回我々は、いわば「キナーゼ常用症」となっているヒトがん細胞株群を用いて、ほとんどの細胞が、単に1種類あるいはそれ以上のRTKリガンドにさらすだけで薬剤感受性を失って生存できるようになることを見いだした。これらの知見の中でも特に臨床的に重要なのが、BRAF変異を持つ黒色腫細胞で肝細胞増殖因子(HGF)によって、BRAF阻害剤PLX4032(ベムラフェニブ)耐性が生じるのが観察されたことである。この観察結果は、がん細胞ではRTKシグナル伝達に大きな余力があることを明確に示しており、幅広く発現されているRTKリガンドが、発がん性キナーゼを標的とする薬剤に対する自然耐性、獲得耐性に広範にかかわっている可能性を強調している。 Full Text PDF 目次へ戻る