Letter 細胞:多重同位体画像化質量分析で明らかになった有毛細胞不動毛の緩徐なタンパク質代謝回転 2012年1月26日 Nature 481, 7382 doi: 10.1038/nature10745 動物の内耳の有毛細胞は、通常、生まれてから死ぬまでの間に置換されることはなく、そのさまざまな細胞小器官の構成成分を絶えず更新しなくてはならない。このような構成成分の1つが不動毛で、それぞれが数百本のアクチンフィラメントからなるコアを1つ持つ。それらのアクチンフィラメントは頂端側表面から生じ、その先端に機械的シグナル伝達装置を有する。不動毛のアクチンの代謝回転については、以前に新生仔ラット培養有毛細胞にβ–アクチン–GFP融合体を導入して調べられており、アクチンが先端から下に向かって2〜3日で更新される証拠が得られていた。アクチン結合タンパク質エスピンを過剰発現させると、12〜24時間以内に不動毛の伸長が起こることからも、不動毛の長さの迅速な制御が示唆される。同様に、ニワトリや哺乳動物の有毛細胞で機械感覚性の「先端糸(tip link)」は切断後5〜10時間で更新される。一方、ニワトリの不動毛のin vivoでの代謝回転はずっと遅い。この説明としては、不動毛の特定の構成成分だけが高速で代謝回転する、あるいは、迅速な代謝回転が起こるのは新生仔動物のみ、培養中のみ、もしくは破損やアクチン過剰発現のようなチャレンジに対する応答時のみ、などのいくつかの可能性が考えられる。今回我々は、15N–標識アミノ酸前駆体を含む餌を動物に与え、多重同位体画像化質量分析法を用いて、新たなタンパク質の出現を測定することにより、タンパク質の代謝回転を定量する。意外にも、成体カエルや成体マウス、新生仔マウスでは、in vivoおよびin vitroで不動毛はきわめて安定であり、新たに合成されたタンパク質の1日当たりの取り込み量は10%以下であった。不動毛の先端だけが迅速な代謝回転を示し、トレッドミル状態は観察されなかった。他の複数の方法でもこのことは確認された。β–アクチン–GFPを発現する有毛細胞で、脱色により毛束を横切る方向に基準線をつけたところ、6日経ってもこの線は移動しなかった。β–あるいはγ–アクチンの発現をタモキシフェン誘導性組み換えにより停止させたところ、いずれのアクチンのアイソフォームも先端部分を除いて不動毛に残っていた。したがって、不動毛の迅速な代謝回転は先端部分だけで起こり、トレッドミル過程によって起こるのではない。 Full Text PDF 目次へ戻る