Letter 細胞:多重同位体画像化質量分析により、幹細胞の分裂と代謝を定量する 2012年1月26日 Nature 481, 7382 doi: 10.1038/nature10734 安定同位体標識を利用した質量分析は生物の動的状態の解明に大きく役立ってきたが、この方法が行えるのはある程度の量がある組織や細胞に限定されている。我々は、マイクロメートル以下の分解能で安定同位体の取り込みを観察、測定できる、多重同位体画像化質量分析(multi-isotope imaging mass spectrometry: MIMS)を開発した。今回我々は、このMIMSをショウジョウバエ、マウス、ヒトなど、さまざまな生物に応用し、「不死鎖仮説(immortal strand hypothesis)」を検証した。この仮説では、幹細胞の非対称分裂の際に、元の鋳型DNAを含む染色体は、そのまま幹細胞として残る運命にある娘細胞へと分配されるため、生涯にわたって遺伝的安定性が保たれると予測している。マウスを、妊娠中から生後8週になるまで15N–チミジンで標識してから追跡を始めて4週間後、分裂中の小腸腺窩細胞には15N標識の保持は観察されなかった。15N–チミジンをパルスチェイス法で取り込ませた成体マウスでは、増殖中の腺窩細胞で15N標識が希釈されることがわかり、ランダムなDNA鎖分離と符合する結果が得られた。さらに、ショウジョウバエでの脂質代謝回転の原理証明実験やヒトの造血系への応用を行って、MIMSの幅広い有用性を実証した。これらの研究により、他の技術では望めない安定同位体標識の高分解能での定量がMIMSでは可能であり、生物学研究および医学研究に広く応用可能であることが明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る