Letter 生理:ショウジョウバエでは、TRPA1の温度感受性の調整によって感覚の識別が可能になっている 2012年1月5日 Nature 481, 7379 doi: 10.1038/nature10715 感覚刺激の識別は、動物が生存していくのにきわめて重要である。この種の識別は、その刺激が有害であるか無害であるかを評価する際に特に不可欠である。昆虫からヒトに至る生物では、一過性受容器電位(TRP)チャネルは、温度刺激や化学刺激などの感覚刺激を変換する重要なトランスデューサーである。多くのTRPは、多様な刺激に応答する多モード受容体だが、動物がどのようにして同じTRPを活性化する複数の感覚入力を区別するのかは、ほとんど解明されていない。今回我々は、ショウジョウバエ(Drosophila)のTRPA1を活性化する刺激が、どのように識別されているのかを明らかにする。ショウジョウバエのTRPA1は有害な化学物質にも無害な温度上昇にも応答するが、TRPA1を発現する化学感覚ニューロンは、化学物質には応答するものの加温には応答しないことがわかった。この特異性は、これまでに知られているTRPA1アイソフォームに比べて温度感受性の低い、化学感覚特異的なアイソフォームによってもたらされていた。この感受性低下は、分子レベルで見ると、チャネルの温度感受性をロバストに低下させる1つの独特な領域によっている。細胞種によってTRPA1活性が異なることはきわめて重要で、化学受容器で温度感受性アイソフォームが発現すると、ショウジョウバエは無害な加温に反応して侵害防御応答の1つである吐き戻しを行う。TRPA1のアイソフォームの多様性はマラリア媒介蚊でも保存されており、このことから、同様な仕組みによって宿主由来の熱感(誘引因子)と化学忌避物質が識別されるのではないかと考えられる。これらの知見が示すように、TRPチャネルの機能の多様化には温度感受性の低下が不可欠であり、そのおかげで、温度感受性が不適応となるような状況でもTRPチャネルの利用が促されるのだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る