Letter 地球:北極海の淡水経路の変化 2012年1月5日 Nature 481, 7379 doi: 10.1038/nature10705 北極海のカナダ海盆の淡水化は1990年代に始まり、少なくとも2008年末まで継続した。そのときまでに、1970年代に大塩分異常が起こった際の4倍以上の淡水を北極海が得た可能性があり、全球海洋循環の速度が遅くなるという見通しが高まっている。淡水化は海氷融解の増加と流出水の寄与が原因とされているが、ボーフォート高気圧(海面大気圧の特徴的な高まり)が強化されて、時計回りの高気圧的な風のパターンが加速され表層に淡水が集まるというのが主たる説明である。観測が限られているため、この説明の検証は困難であり、ボーフォート高気圧が弱くなった状況で淡水量が増加したという観測結果から、他の要因が淡水量に影響を及ぼしているはずだと考えられている。本論文では、2005年から2008年に海氷域が記録的に減少した際に淡水量の変化を支配していたのは、ユーラシア海盆の減少と釣り合ったカナダ海盆での増加であったことを、観測結果を用いて示す。観測結果は人工衛星データ(海面高度と海底水圧)とin situ観測データから得られた。淡水の変化は、北極振動指数の増加を特徴とする西から東への北半球大気循環の強化によって、ユーラシアの流出水の海洋経路が低気圧的に反時計回りに変化したためであった。この結果は、流出水が北極海に大きな影響を及ぼしていることを裏付けており、空間的時間的な流出水の経路の発現は、風によるボーフォート循環の強さではなく、北極振動により調節されていることを立証している。 Full Text PDF 目次へ戻る