Letter 化学:溶液せん断法で作製された有機半導体における電荷輸送を格子歪みで調節する 2011年12月22日 Nature 480, 7378 doi: 10.1038/nature10683 有機半導体を用いる回路は、折り曲げ自在で透明かつ安価な電子機器に応用するために、盛んに研究されている。しかし、そのような応用を実現するには、溶液プロセスで作製した有機半導体の電荷キャリア移動度を高めなければならない。無機半導体の場合、電荷キャリア移動度を高める一般的な方法は、結晶格子内への歪みの導入である。本論文では、格子歪みを使って成分分子間の電子軌道の重なりを大きくすることによって、有機半導体の電荷キャリア移動度を高める溶液プロセス法について報告する。有機半導体の場合、面と面が向き合うように積み重なった共役骨格の間隔(π-π積層間隔)は、電子軌道の重なり、ひいては移動度に大きな影響を与える。我々の方法を用いて格子歪みを徐々に導入することにより、6,13–ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS–ペンタセン)のπ-π積層間隔を3.33Åから3.08Åまで変化させている。3.08Åは、これまで有機半導体結晶格子で実現されたなかで最も短いπ-π積層間隔だと考えられる(ただし、分子内結合によってπ-π積層間隔3.04Åが過去に実現されている)。TIPS–ペンタセン・トランジスタにおける正電荷キャリア(ホール)移動度は、無歪み膜の0.8 cm2V-1s-1から、歪み膜の4.6 cm2V-1s-1という高い移動度にまで増加した。溶液プロセスで格子を歪ませ分子充填を調整する方法は、高性能で安価な有機半導体デバイスの開発に役立つだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る