Letter 物理:ブラウン運動における流体力学的記憶に起因する共鳴 2011年10月6日 Nature 478, 7367 doi: 10.1038/nature10498 環境と相互作用する小さなプローブのブラウン運動を観測することは、ソフトマターの主な特性評価法の1つとなる。本質的には、ブラウン粒子の運動を支配しているのは2つの対抗する力である。第一に、粒子は周囲の溶媒分子との高速衝突によって動かされ、これは熱的ノイズと見なされる。第二に、粒子と粘性溶媒との摩擦によって、粒子の動きが減衰する。熱的な力は従来から不規則であるとされ、白色ガウス雑音スペクトルによって特徴付けられると考えられている。摩擦はストークス抵抗によって与えられるとされており、このことは、粒子追跡実験で慣性が無視できる場合には長時間で運動が過減衰することを示唆している。しかし、粒子は、揺らぐ流体分子から運動量を受け取るので、ごく近傍の流体を変位させる。この同伴流体は、粒子に対して作用し返すので、長距離相関を発生させる。この流体力学的「記憶」は熱的な力に変換され、この力は色付き、つまり非白色雑音スペクトルを持つ。ブラウン運動に関するペランの先駆的な実験から100年経っても、この色の直接的な実験観測は、まだ成功していない。今回我々は、強い光トラップに微小球のブラウン揺らぎを閉じ込めることによって、熱的雑音のスペクトルを測定した。流体力学的相関が球の位置揺らぎのパワースペクトル密度に共鳴ピークをもたらすことが示され、これは過減衰系とは大きく異なる。さらに、ピーク増幅を実現する別の手法を実証した。我々の結果は、マイクロカンチレバーセンサーとの類似性から、粒子–流体–トラップ系が固有の流体力学的逆流が共鳴を増強するナノメカニカル共振器と見なせることを明らかにしている。したがって、熱的雑音は擾乱として扱うのではなく、その詳細を新種センサーの開発やラボ・オン・ア・チップ応用に向けた粒子ベースのアッセイ開発に使える可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る