最近のDNA合成技術の進歩は、新規な遺伝子経路やゲノム要素の構築を可能にし、システムレベルでの事象についての解明が進んでいる。DNAの大きな断片が合成可能になったことで、設計原理を任意に組み合わせて経路とゲノムを操作することができるようになった。本論文では、合成酵母ゲノムプロジェクトSc2.0と、初めての部分合成真核生物染色体である出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)染色体synIXR、semi-synVILについて報告する。合成ゲノムの3つの設計原理は次のように定めた。第一に、野生型の表現型と適応度(に近いもの)を得ること、第二に、tRNA遺伝子やトランスポゾンのような不安定要素を持たないこと、第三に、その後の研究が行いやすいような遺伝的柔軟性を持つことである。この合成ゲノムには、設計原理に従ってシステムに全体的な修正が複数加えてあり、その中には誘導可能な進化システムSCRaMbLE(synthetic chromosome rearrangement and modification by loxP-mediated evolution;loxPを介した進化による、合成染色体の再編成と修正)も含まれる。SCRaMbLEを新しいコンビナトリアル変異導入法として用いて、複雑な遺伝子型と非常に多様な表現型が作り出せることを示す。完全合成ゲノムが完成すれば、酵母ゲノムの大規模な再構築が可能になり、遺伝子含量やコピー数の差異だけに基づいた新しいタイプのコンビナトリアル遺伝学への道が開けるかもしれない。