Letter 生理:線虫およびショウジョウバエの寿命にSir2過剰発現の影響は認められない 2011年9月22日 Nature 477, 7365 doi: 10.1038/nature10296 出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、線虫(Caenorhabditis elegans)およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で、サーチュイン(NAD+依存性タンパク質デアセチラーゼ)の過剰発現が寿命延長効果を示すことが報告されている。老化に対する遺伝子の作用に関する研究は、遺伝的背景の影響と区別がつきにくいという欠点を持つ。今回我々は、線虫およびショウジョウバエの両者で、老化に対してサーチュインの過剰発現が及ぼすとされている影響について再検討し、遺伝的背景を標準化し、適切な対照群を用いることにより、見かけの作用が消失することを見いだした。線虫では、sir-2.1を高度に過剰発現する系統との異系交配により寿命の延長が抑制されたが、sir-2.1の過剰発現は阻害されなかった。代わりに、寿命延長は感覚ニューロンに影響を及ぼす第二の部位の突然変異と共分離した。コピー数の少ないsir-2.1を過剰発現する系統との異系交配では、寿命延長も抑制された。UAS-GAL4システムによってdSir2を広範に過剰発現する系統のショウジョウバエは、これまでの報告と同様に、野生型の対照群に比較して生存期間が延長していたが、適切な遺伝子導入対照群との比較、あるいはdSir2をさらに強く過剰発現する新規系統との比較では、いずれの場合も生存期間の延長は見られなかった。これらの知見は、寿命に対する遺伝的影響の研究では、遺伝的背景および遺伝子導入による変異原性作用の制御が重要であることを強調している。ショウジョウバエの老化における食餌制限による寿命延長効果もdSir2に依存することが報告されている。我々は、食餌制限はdSir2とは無関係にハエの寿命を延長させることを見いだした。今回得られた知見は、サーチュインが後生動物の寿命決定に果たす役割を否定するものではないが、線虫およびショウジョウバエの寿命に対するこれまで報告されてきたサーチュインの影響の確実性には疑問を投げかける結果となっている。 Full Text PDF 目次へ戻る