腸の上皮の機能不全は、共生細菌の腸壁への過剰な移行を生じることになり、これが末端回腸の炎症を特徴とするヒトの不治の炎症性腸疾患であるクローン病での慢性的な粘膜炎症を引き起こすと考えられている。健常者では、腸上皮は緊密に接触した細胞によって構築される物理的障壁を維持している。さらに、パネート細胞や杯細胞のような特殊化した上皮細胞は、粘液や抗微生物ペプチドを分泌して自然免疫による防御機能をもたらし、上皮近傍への細菌の接近と生存を阻止している。上皮細胞死は腸の炎症の顕著な特徴であり、ヒトのクローン病の発病機構である可能性が検討されている。しかしながら、上皮細胞死の調節と、その腸恒常性における役割はほとんど理解されていない。今回我々は、腸上皮細胞(IEC)のネクロトーシスおよび限局性回腸炎の調節にカスパーゼ8が非常に重要な役割を持つことを実証する。腸上皮でカスパーゼ8を条件的に欠損させたマウス(Casp8ΔIEC)は、末端回腸に炎症性病変を自然発症させ、腸炎が起こりやすくなった。Casp8ΔIECマウスは、パネート細胞を欠損し、杯細胞の数も減少していて、これは腸上皮免疫細胞の抗微生物機能の調節不全を示している。Casp8ΔIECマウスでは、小腸陰窩のパネート細胞領域で細胞死が増加していた。上皮細胞死は、腫瘍壊死因子(TNF)-αによって誘導され、Rip3(receptor-interacting protein 3、Ripk3としても知られる)の発現増加と関連し、またネクロトーシスの阻害によって抑制された。また、クローン病の患者の末端回腸では、ヒトパネート細胞でRIP3が高レベルに発現し、ネクロトーシスが増加していることがわかった。このことは、この病気の原因にネクロトーシスが関与している可能性を示唆している。以上をまとめると、我々のデータは、腸の恒常性調節とTNF-α誘導性のネクロトーシス性細胞死からのIECの保護にカスパーゼ8が非常に重要な役割を果たしていることを明らかにしている。