Letter 細胞:ストレス応答経路は、β2アドレナリン受容体とβアレスチン1を介してDNA損傷を調節する 2011年9月15日 Nature 477, 7364 doi: 10.1038/nature10368 ヒトの心と体は、ストレス、すなわち恒常性を脅かすと認識される状況に対しては闘争・逃避反応と呼ばれる応答で、交感神経系を活性化してカテコールアミンであるアドレナリンとノルアドレナリンを分泌することにより対処する。このストレス応答は一般には一過性だが、それはこの応答に伴って起こる免疫抑制や増殖阻害、異化促進などの影響が長期にわたって継続すると有害となりうるからである。慢性のストレス応答は、消化性潰瘍、心臓血管病といった病気の症状と関連する場合があり、慢性ストレスがDNA損傷に結びつくことも疫学研究により強く示されている。このようなストレスによって起こるDNA損傷は、老化や腫瘍形成、神経精神症状、流産を促進している可能性がある。しかし、ストレスに応じてDNA損傷が起こる仕組みは解明されていない。ストレスホルモンであるアドレナリンは、生殖系列細胞や接合胚を含め、全身で発現されているβ2アドレナリン受容体を刺激する。活性化されたβ2アドレナリン受容体は、プロテインキナーゼA(PKA)のGsタンパク質に依存した活性化を促進し、次いでβアレスチンが動員される。βアレスチンはGタンパク質シグナル伝達を脱感作し、それ自体がシグナル伝達物質として機能する。今回我々は、β2アドレナリン受容体に作用するカテコールアミン類はGs–PKA経路を介してDNA損傷を引き起こし、またβアレスチンがかかわるシグナル伝達経路を介してp53レベルを抑制し、この2つが相乗的に働いて、その結果DNA損傷が蓄積することを明らかにした。マウスおよびヒトの細胞系列では、β2アドレナリン受容体を介して活性化されたβアレスチン1(ARRB1)がAKT仲介性MDM2活性化を促進し、また足場として働いてMDM2のp53への結合を促し、p53の分解を促進する。Arrb1ノックアウト(Arrb1−/−)マウスでは、急性、慢性のストレスに顕著に応答する器官である胸腺と、父親のストレスが子孫のゲノムに影響を及ぼす可能性がある精巣の両方で、p53レベルが維持されており、このマウスではカテコールアミンが誘発するDNA損傷が起こらない。これらの結果は、核内でE3リガーゼのアダプターとして働くというARRB1の新たな役割をはっきり示しており、慢性ストレスに応じてDNAが蓄積する仕組みを明らかにしている。 Full Text PDF 目次へ戻る