Letter 構造生物学:T4リゾチーム変異体の一時的に形成される数少ない状態の溶液構造 2011年9月1日 Nature 477, 7362 doi: 10.1038/nature10349 タンパク質は本来柔軟な分子で、その機能は多くの場合、分子の異なるコンホメーション(配座異性体)間の分布の偏りに非常に強く依存している。しかし、タンパク質の構造と動力学的性質および機能の間の関係の正確な解明は、依然として進んでいない。これは、そのエネルギー地形上にある配座異性体の多くが一時的にのみ形成され、全体に占める数が非常に少なく(全体の分子数の数パーセント以下)、ほとんどの生物物理学的手法では個々の特徴を調べられないことに原因がある。今回我々は、T4ファージ由来のリゾチーム変異体で、疎水的な分子と結合し、その約3 %が25°Cで一時的(約1 ms)な励起状態をとるものについて調べた。このような結合は、基底状態を介してのみ起こることを示す。また、この観測を合理的に説明できるCS-ロゼッタモデル作成と緩和分散NMRとを組み合わせるという戦略によって得られた、「見えない」励起状態の原子レベルのモデルを提示する。このモデルを、構造に基づく設計計算を用いて検証し、基底状態よりも励起状態の方を安定化すると予測された点変異体の同定を行った。この方法により、基底状態をとっている分子集団と励起状態をとっている分子集団の相対的比率を逆転させ、タンパク質の機能を変化させる1対の変異が導入された。我々の結果は、エネルギー地形上の各状態間の微妙な均衡を変えることによって、タンパク質の機能が進化するという機構を示唆している。もっと一般的には、この結果は、タンパク質の励起状態のモデル作成と検証が我々の手法により可能であることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る