植物の葉で合成されて茎頂へと運ばれ、そこで花の形成を誘導するホルモンとして、「フロリゲン」の存在が提唱されたのは75年前である。最近になってようやく、遺伝学や生化学研究により、フロリゲンは高等植物で広く保存されている遺伝子FLOWERING LOCUS T(FT)にコードされていることが確証された。しかし、フロリゲンが花成誘導に果たす正確な役割はほとんど解明されないままで、フロリゲン受容体も同定されていなかった。今回我々は、FT相同タンパク質であるイネのHd3aが、茎の頂端細胞の14-3-3タンパク質と結合することを明らかにする。生成した複合体は核内へと移動し、そこでさらに転写因子OsFD1(Oryza sativaFD1;イネのシロイヌナズナFD相同体)と結合する。こうして形成された3つのタンパク質からなる「フロリゲン活性化複合体」(FAC)が、シロイヌナズナAPETALA1(AP1)の相同遺伝子であるOsMADS15の転写を引き起こし、これが花の形成につながる。さらに、このイネFACの結晶構造を2.4 Åの分解能で決定した。この構造から、フロリゲンの花芽形成作用の基盤が明らかになった。これらの知見は、茎頂細胞の14-3-3タンパク質が細胞内フロリゲン受容体として働くことを示しており、さまざまな作物や樹木の開花を制御する新しい方法の開発に道を開く。