Letter 細胞:GluN1/GluN2B NMDA受容体のサブユニット配置とフェニルエタノールアミンの結合 2011年7月14日 Nature 475, 7355 doi: 10.1038/nature10180 抗高血圧薬イフェンプロジルに、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体を介した神経保護作用があることが見いだされて以来、その作用機序を解明し、それに基づいてより優れた治療薬を開発するための研究が行われてきた。NMDA受容体を介した神経伝達は、脳の基本的な発達と機能に不可欠である。NMDA受容体類はヘテロ複合体イオンチャネルを形成し、GluN1サブユニットとGluN2サブユニットのそれぞれにグリシンとグルタミン酸が同時に結合すると活性化される。NMDA受容体の機能的特徴は、アミノ末端ドメイン(ATD)への低分子の結合によって、サブタイプ特異的にアロステリックな調節を受けることである。イフェンプロジルやそれと近縁のフェニルエタノールアミン化合物はGluN1/GluN2B NMDA受容体を特異的に阻害し、うつ病やアルツハイマー病、パーキンソン病などのさまざまな神経疾患の治療に使える可能性があるとして、集中的に研究が行われてきた。相当な努力にもかかわらず、フェニルエタノールアミンの認識とATDを介したアロステリック阻害の基盤となる機序は、構造情報が不足しているためにいまだに解明が進んでいない。今回我々は、GluN1/GluN2BのATDがヘテロ二量体を形成することと、フェニルエタノールアミンはGluN2B内部の溝ではなく、GluN1とGluN2Bの接触面に結合することを明らかにする。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)由来のGluN1bのATDとドブネズミ(Rattus norvegicus)由来のGluN2BのATDとで形成されたヘテロ二量体の結晶構造から、非NMDA受容体のホモ二量体に見られる配置とは全く異なるサブユニットの配置パターンが明らかになり、フェニルエタノールアミンの結合を決定する分子レベルの要因が明らかになった。GluN2B ATDの二葉構造のサブユニット間にジスルフィド結合を導入してドメインの動きを制限するとイフェンプロジルに対する感受性が大きく低下し、イフェンプロジルを介したNMDA受容体のアロステリック阻害には、GluN2B ATDのコンホメーションが束縛されていない状態にあることが不可欠なことが示された。これらの知見は、神経疾患に対する治療的により有用なサブタイプ特異的化合物の設計に道を開く。 Full Text PDF 目次へ戻る