Letter 医学:ROSへのストレス応答を標的とする低分子によるがん細胞の選択的殺作用 2011年7月14日 Nature 475, 7355 doi: 10.1038/nature10167 がん遺伝子の機能獲得性変異および腫瘍抑制因子遺伝子の機能喪失性変異によって起こる悪性化への形質転換は、細胞の脱調節につながるが、これは細胞ストレス(酸化ストレス、複製ストレス、代謝ストレス、タンパク質毒性ストレスやDNA損傷など)の増大に関連することが多い。このストレス表現型への適応はがん細胞の生存に必要で、その結果、がん細胞は、正常細胞では通常そのような生存にかかわる機能を担っていない非がん遺伝子に依存的になる可能性がある。したがって、形質転換した遺伝子型で、このような非がん遺伝子依存性を標的とすれば、合成致死性の相互作用を引き起こし、がん細胞を選択的に死滅させる可能性がある。本論文では、細胞ベースの低分子スクリーニングと定量プロテオミクスの手法を用い、正常細胞は死滅させずに選択的にがん細胞を死滅させる低分子を偏りなく同定した。ピペロングミンは、がん細胞でもがん遺伝子型を持つように操作された正常細胞でも、p53の状態に関係なく活性酸素種(ROS)のレベルやアポトーシスによる細胞死を増加させるが、初代培養正常細胞では、急速に分裂中の細胞にも、分裂速度の遅い細胞にもほとんど影響を与えない。ピペロングミン処理を行うと、正常マウスでは明らかな毒性を示さず、マウスの異種移植腫瘍モデルでは著しい抗腫瘍効果が観察される。そのうえ、ピペロングミンは、マウスで自然に形成された乳がんの増殖や、それに伴う転移を強力に抑制する。我々の結果は、ある低分子によって、がん遺伝子型を持つ細胞で選択的にアポトーシスが誘導されることを示している。これは、形質転換によって引き起こされる酸化ストレスに応答してがん遺伝子型が発現し、それを介して獲得される非がん遺伝子への共依存関係を標的とすることで達成される。 Full Text PDF 目次へ戻る