ヒストン修飾という標識は、クロマチンがかかわる多くの過程で重要な役割を果たしている。DNA複製の際には、ヘテロクロマチンとユークロマチンは共に、複製フォークの前方で壊され、複製フォークの後ろで元通りのエピジェネティック状態に組み立てられる。ヒストン標識が世代から世代へと正確に受け継がれる仕組みは、ほとんど解明されていない。分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)では、RNA干渉(RNAi)を介したヒストンメチル化が、細胞周期に応じて調節されている。細胞周期のS期にセントロメアの反復配列が一時的に転写され、RITS(RNA-induced initiation of transcriptional gene silencing)複合体やRDRC(RNA依存性RNAポリメラーゼ複合体)によって処理されて短鎖干渉RNA(siRNA)となる。この小型のRNAが、Dos1(Clr8、Raf1とも呼ばれる)やDos2(Clr7、Raf2とも呼ばれる)、Rik1、Lid2などのサイレンシング因子と共に働いて、ヒストンメチルトランスフェラーゼClr4によるヘテロクロマチンのヒストンH3リジン9(H3K9)のメチル化を促進する。H3K9のメチル化によって、後生動物のヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)の構造的機能的相同体であるSwi6の結合部位が生じる。今回我々は、Dos2、Rik1、Mms19、Cdc20(DNAポリメラーゼεの触媒サブユニット)を含む分裂酵母のサイレンシング複合体を明らかにする。この複合体はヘテロクロマチンでのRNAポリメラーゼII(RNA Pol II)活性を調節しており、DNA複製とヘテロクロマチン形成に必要である。この知見により、DNA複製とヒストンメチル化を結びつけている分子が明らかになり、細胞周期のたびにエピジェネティックな標識が受け継がれていく仕組みについての手がかりが得られる。