Letter 医学:安静時のNMDA受容体阻害は行動面に即効的な抗うつ応答を引き起こす 2011年7月7日 Nature 475, 7354 doi: 10.1038/nature10130 臨床研究では、イオンチャネル型グルタミン酸作動性NMDAR(N-メチル-D-アスパラギン酸受容体)アンタゴニストであるケタミンを、向精神作用を及ぼさない程度の低用量で大うつ病患者に単回投与すると、即効的な抗うつ応答が生じることが知られているが、その基盤となる機構は不明である。うつ病患者は、ケタミンの低用量静脈内投与を1回受けて2時間以内に大うつ病症状の緩和を覚え、その後最長2週間、効果が持続するという。これは、既存の抗うつ薬(セロトニン再取り込み阻害剤)が、その効果出現に数週間を要するのと対照的である。既存薬の遅効性は現行の大うつ病治療の大きな弱点の1つで、特に自殺リスクの高い患者のための即効的な抗うつ薬が求められている。ケタミンの作用は、うつ病患者に即効的かつ持続的な抗うつ応答をもたらすことから、即効性の基盤となる細胞機構を探求するための希少な例となる。本論文では、ケタミンなどのNMDARアンタゴニストが、マウスモデルにおいても行動面に即効的な抗うつ剤様効果を示すこと、また、それらの作用が脳由来神経栄養因子の急速な合成によることを示す。ケタミンによる安静時のNMDAR阻害は、真核生物伸長因子2(eEF2)キナーゼ(別名CaMKIII)を脱活性化してeEF2のリン酸化レベルを下げ、脳由来神経栄養因子の翻訳を脱抑制する。さらに、eEF2キナーゼの阻害剤も、即効的な抗うつ剤様効果を行動面に引き起こすことがわかった。これらの知見から、自発的な神経伝達によるタンパク質合成の調節は、即効性のある抗うつ剤開発の有効な治療標的になると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る