Letter 細胞:リボソームは翻訳に際してメッセンジャーRNAをほどくのに2種類の能動的機構を用いている 2011年7月7日 Nature 475, 7354 doi: 10.1038/nature10126 リボソームは、メッセンジャーRNAにコードされた遺伝情報をタンパク質へと翻訳する。mRNAのコード領域にある折りたたみ構造は、ペプチドの伸長速度を低下させる動力学的な障害物となっている。それは、リボソームがmRNAへの進入部位のところで遭遇した構造を壊さないと、次のコドンのところまで移動して翻訳を行えないからである。細胞はこのような構造をうまく使って、プログラムされたフレームシフトなどの翻訳調節や、タンパク質の発現レベルの調節、リボソームの局在化、翻訳と同時に起こるタンパク質の折りたたみのための多様な戦略を生み出している。鎖を分ける解離活性はリボソームに本来備わっていて外部のヘリカーゼは必要としないが、その作用機構はまだわかっていない。今回我々は、mRNAヘアピン構造について光ピンセットによる単一分子解析を行い、解読中心での同一コドンの翻訳速度が、mRNAの進入部位における折りたたみ構造のGC含量に強く影響されることを見いだした。さらに、ヘアピンの両端にヘアピンがほどけやすくなるように力を加えると、翻訳速度が著しく上昇した。このヘリカーゼ活性の力依存性の定量的解析から、これまでに研究されてきたヘリカーゼとは異なり、リボソームはmRNAの構造をほどくのに2種類の異なる能動的機構を用いていることがわかった。リボソームは、mRNA進入部位のらせん接合部の熱揺らぎを開いた状態へと偏らせることによりらせん接合部を不安定にし、リボソームの移動が妨げられる確率を低下させる。またリボソームは、移動に伴うコンホメーション変化の際に、閉じた状態のらせん接合部のmRNA一本鎖を力学的に引き離す。この2番目の作用によって、細胞内での最低限の翻訳速度が確保されるので、リボソームを一時的に停止させるには力学的に安定な特殊な構造が必要となる。これらの結果は、翻訳における伸長速度がmRNAの構造によってどのような仕組みで調節されるかを理解するための定量的力学的基盤を確立するものだ。 Full Text PDF 目次へ戻る