Letter 物理:電子形状の改良した測定 2011年5月26日 Nature 473, 7348 doi: 10.1038/nature10104 電子はわずかに非球形と予測されており、その歪みは電気双極子モーメント(EDM)つまりdeによって表される。このずれが実験によって検出されたことはまだない。素粒子物理学の標準モデルでは、deが現行の実験感度よりも約11桁も小さく、小さすぎて検出できないと予測されている。しかし、この標準モデルに対する多数の拡張版ではdeの相当大きい値が予測されており、検出可能だろうと考えられている。そのため電子EDMの探索は、新しい物理学を探索し可能な拡張版を絞り込むのに有効な方法となる。特に、新しい超対称性粒子が数百GeV/c2(cは光速)の質量に存在する可能性があるという一般的な考えと、現在の感度限界では電子EDMは存在しないこととを両立させるのは難しい。EDMの大きさは、この宇宙に反物質がほとんどないのはなぜなのかという問題とも密接に関係している。その理由が、何らかの未発見の粒子相互作用が物質と反物質との間の対称性を破るというものであれば、素粒子物理学のほとんどのモデルにおいて測定可能なEDMが生じるはずである。本研究では、低温極性分子を使い、これまで報告された中で最高レベルの精度で電子EDMを測定し、可能なあらゆる未知の相互作用に対する拘束条件を得た。de = (−2.4±5.7stat±1.5syst)×10−28 e cmという値が得られた。eは電子電荷であり、これから90パーセントの信頼性で|de| < 10.5×10−28 e cmという新しい上限が設定される。この結果は零であることと一致し、この改良した精度レベルでは電子は球形であることを示している。我々による、分子のアト電子ボルトエネルギーシフトの測定は、テラ電子ボルトエネルギースケールでの新しい物理学の観測手段となる。 Full Text PDF 目次へ戻る