熱帯大西洋の気候変動は大規模な大気海洋相互作用に支配されており、この相互作用は、特に海洋とその周辺の大陸の上の大気の深い対流に影響を与える。太平洋のエルニーニョ/南方振動と北大西洋振動からの影響を除けば、熱帯大西洋の変動は、2つの異なる海洋大気結合変動モードによって支配されていると考えられている。その1つは、南北方向の海面水温勾配を特徴とし数十年の時間スケールで活発となる変動モードで、もう1つは、東西方向の海面水温勾配を特徴とし年々の時間スケールで活発となる変動モードである。本論文では、赤道大西洋の深海の固有の海洋動態も、熱帯大西洋域の海面水温、風、降水に影響を与える可能性があり、4.5年の気候周期を生じさせることの証拠を報告する。特に、短い鉛直波長を持ち、周期が約4.5年、振幅が10 cm s−1を超えて鉛直方向に位相が反転する深層の東西ジェットが大西洋の深海で観測され、海面に向かって上方にエネルギーを伝播していることがわかった。これらは、海面で振幅が約6 cm s−1の赤道東西流の偏差と、0.4 °Cの東大西洋の温度偏差と関係していて、風と降水の明確なパターンを伴っている。深層のジェットは、太平洋やインド洋でも観測されているが、大西洋の深層ジェットだけが、年々の時間スケールで振動するらしい。これらのジェットの持続性や規則性に関する我々の知識は、高品質のデータが入手しにくいために限られている。このような注意点はあるが、それでもなおこの振動的な振る舞いを用いて、熱帯大西洋の海面水温の予測を改善できる。赤道潜流を介した深層ジェットの生成と上方へのエネルギー輸送の解明は、さらなる理論的研究に値する。