Letter

代謝:光合成を行う珪藻類での尿素サイクルの進化と代謝的意義

Nature 473, 7346 doi: 10.1038/nature10074

珪藻類は、富栄養条件下での植物プランクトンバイオマスの大きな部分を占めており、世界で最も生産性が高い海洋食物網の一部の基盤を形成している。珪藻の核ゲノムには、細菌や色素体に起源を持つ遺伝子群のほかに、二次細胞内共生宿主(外部共生生物)の遺伝子群も含まれるが、それぞれの遺伝子群が珪藻の代謝に相対的にどのくらい寄与しているのかはほとんどわかっていない。今回我々は、外部共生生物由来のオルニチン–尿素サイクルが長期の窒素欠乏からの急速な回復を促進することを明らかにした。このサイクルは、後生動物のサイクルに類似しているが、緑藻類および緑色植物には存在しない。ミトコンドリアのカルバモイルリン酸シンターゼをRNA干渉でノックダウンすると、窒素添加に対する窒素欠乏珪藻の応答が低下する。メタボローム解析では、オルニチン–尿素サイクルの中間体が特に枯渇しており、トリカルボン酸回路およびグルタミンシンテターゼ/グルタミン酸シンターゼ回路が共にオルニチン–尿素サイクルと直結されていることが示された。枯渇したほかの複数の代謝産物は、細菌から水平伝播で得た遺伝子の産物により、オルニチン–尿素サイクルの中間体から生成される。細菌由来タンパク質と外部共生生物由来タンパク質のこうした代謝的連結は、その影響を受ける化合物の中に、珪藻の主要な浸透圧調節物質であるプロリンや細胞壁形成時の珪酸蓄積に必要な長鎖ポリアミン類の前駆体などを含むことから、珪藻の生理的特性にきわめて重要だと思われる。これまで、オルニチン–尿素サイクルは、後生動物の固定窒素の排除に必須の役割を果たすことが知られているのみであった。珪藻類では、このサイクルが無機炭素および無機窒素の分配と再パッケージングのハブとして機能し、窒素が一時的に得られるようになった状態での珪藻類の代謝応答に大きく寄与している。したがって、珪藻のオルニチン–尿素サイクルは、珪藻の増殖および海洋の生産力に対する珪藻の寄与に必須な窒素化合物を補充的炭素固定によって生成するための重要な経路である。

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