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地球:スピン転移と地球マントル深部における鉄に富んだケイ酸塩メルト

Nature 473, 7346 doi: 10.1038/nature09940

メルトは同じ組成の固体ケイ酸塩よりも体積が大きい(密度が小さい)。しかし、高圧下ではこの体積差は減少し、地球内部の高圧力条件下では重い元素である鉄に十分に富んだメルトが固体よりも密度が大きくなる可能性は長い間、少なからぬ推測を生むもととなっていた。地球マントル最下部にそのような密度の大きいケイ酸塩メルトが発生するなら、地球の物理的および化学的進化に重要な結果がもたらされ、核–マントル境界域で観測されているさまざまな特徴を説明する統一的なモデルが得られるかもしれない。浅部マントル圧力条件下における(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトとメルトの間の鉄の分配係数を用いた最近の理論的計算によると、メルトは地球マントル最下部の圧力条件下では固体よりも密度が大きいことが示唆されており、衝撃波実験の解析も同様の結果を示している。本論文では、全マントル圧力条件下で鉄の分配係数の測定を実施し、約76 GPa以上の圧力で分配係数の急激な変化が生じ、メルトが大きく鉄に富むようになることを見いだした。(Mg0.95Fe0.05)SiO3ガラスに対する補足的なX線発光分光測定は70 GPa付近で鉄のスピン転移が起こることを示しており、観測された鉄分配の変化は、ケイ酸塩メルトにおける鉄の(高スピンから低スピンへの)スピン転移によって説明できる可能性を示唆している。これらの結果は、(Mg,Fe)SiO3液体は、下部マントル中の深さ約1,800 km以深では共存する固体より密度が大きくなることを意味している。地球形成の直後に、地球の集積と内部分化により解放された熱エネルギーによって固体マントルの下に最大約1,000 kmの厚さを持つ密度の大きいメルト層が形成された可能性がある。マントル深部条件では(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトがリキダス相であるため、密度の大きいマグマ層は分別晶出することで鉄に富みケイ素が少ない組成に向けて進化すると予測され、これは地震波観測によって推測されている核–マントル境界域の構造と調和的である。

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