Letter 細胞:ヒト誘導多能性幹細胞を用いた統合失調症モデルの作製 2011年5月12日 Nature 473, 7346 doi: 10.1038/nature09915 統合失調症(SCZD)は衰弱性神経疾患で、全世界における有病率は1%であり、遺伝要因が強く、遺伝率は80〜85%と推定されている。剖検結果から、SCZD患者の脳の前頭前皮質と海馬における脳容積、細胞サイズおよび棘密度の減少、神経分布の異常が明らかになっており、さらに神経薬理学的研究からは、SCZDにはドーパミン作動性、グルタミン酸作動性、GABA作動性の作用が関与していることが示されている。しかしながら、SCZDでどの細胞種が侵されるのかや、症状の原因となる分子機構については解明されていない。SCZDの細胞レベル、分子レベルの異常を明らかにするため、我々は、SCZD患者の繊維芽細胞を直接再プログラム化してヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)を作製し、さらにこの疾患特異的なhiPSCをニューロンに分化させた。SCZD hiPSCニューロンでは、神経突起数の減少、PSD95-タンパク質レベルの低下、およびグルタミン酸受容体発現の低下に関連して神経接続の減少が見られた。SCZD hiPSCニューロンの遺伝子発現プロファイルから、環状AMP経路およびWNTシグナル伝達経路の多くの構成要素の発現が変化していることがわかった。SCZDの表現型の主要な細胞要素および分子要素は、SCZD hiPSCニューロンを抗精神病薬のロキサピンで処理すると改善された。これまでのところ、hiPSCニューロンで異常が明らかにされたのは、単一遺伝子産物の機能喪失と幼児期における急速な病気の進行の両方を特徴とする疾患のみである。今回我々は、複雑な遺伝性精神疾患であるSCZDに関連するhiPSCニューロンの表現型と遺伝子発現の変化を報告する。 Full Text PDF 目次へ戻る