Letter 材料:高性能バルク熱電体に向けた電子バンドの収束 2011年5月5日 Nature 473, 7345 doi: 10.1038/nature09996 熱を直接電気に変換する熱電発電器は長い間、宇宙での使用などの限られた特定用途に追いやられてきた。しかし現在では、自動車廃熱を電気に変換するなどのさまざまな実用的廃熱回収システム用として、盛んに検討が行われている。このような熱電デバイスは信頼性を高くかつ小型にすることができるが、熱電材料自体は比較的効率が低い。普及を促進するためには、1.5を超える高い熱電材料性能指数(zT)を持つ材料を同定し開発することが望ましいと考えられる。高い熱電効率を持つ新材料の探索には、さまざまなアイデアが使われてきた。例えば、ナノ構造化を使ってフォノン熱伝導度を低下させ、これは多様な化合物系の研究につながった。この手法では、電子バンドにおけるバレー(谷)の高い縮退(既知熱電体では6以下)が高いzTにつながることがよく知られており、さらにこの知見に触発されて、低次元ナノ構造の採用によりそのような縮退を設計する試みがなされた。本論文では、ドーピングと組成の調節によって、バルク材料で多数のバレーを収束できることを実証している。この方法により、ドープされたPbTe1−xSex合金で少なくとも12のバレーの収束が実現され、約850ケルビンで1.8という並外れたzT値が得られるに至っている。バンドエンジニアリングで価電子(または伝導)帯を収束させて高いバレー縮退を得る方法は、高ゼーベック係数と高電気伝導度が同時に得られるため、バルク熱電材料の探索と改良の一般的な戦略となると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る