Letter 構造生物学:Rafにより引き起こされるKSRのアロステリック転移はMEKリン酸化を促進する 2011年4月21日 Nature 472, 7343 doi: 10.1038/nature09860 後生動物では、Ras–Raf–MEK(MAPキナーゼキナーゼ)–ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ;extracellular signal-regulated kinase)シグナル伝達経路は、細胞外の刺激を中継して細胞機能と遺伝子発現の変化を引き起こす。発がん性変異によるこの経路の異常活性化は、ヒトがんの多くの原因となる。KSR(kinase suppressor of Ras)はRaf–MEK–ERK複合体の集合を調整する必須の足場タンパク質として働いている。今回我々は、構造研究と生化学的研究を統合して、MEKによる刺激性のRafリン酸化をKSRが促進する仕組みの解明を試みた。ウサギMEK1と複合体を形成したヒトKSR2のキナーゼドメイン(KSR2(KD))の結晶構造から、KSR2(KD)とMEK1の相互作用が、これらが各々持つ活性化セグメントとCローブのαGヘリックスにより仲介されていることを示す。KSR2は、BRAFと同様に、Arg718を含む側面間の相互作用により自己集合する。Arg718残基は、遺伝子スクリーニングによりRasシグナル伝達の抑制因子であることが明らかにされている。ATPはKSR2(KD)の触媒部位に結合しており、in vitro分析と化学遺伝学の手法により、KSR2のキナーゼ活性がMEK1を標的とすることが実証された。KSR2(KD)–MEK1複合体では、両方のキナーゼの活性化セグメントが互いに拘束し合い、KSR2は不活性なコンホメーションをとっている。BRAFはKSR2のキナーゼ活性をアロステリックに促進し、これは側面が接するように並んだKSR2–BRAFヘテロ二量体の形成に依存している。さらに、KSR2–BRAFヘテロ二量体が形成されると、BRAFが誘発するMEKリン酸化が増大する。これは、リン酸化のためにMEKの活性化セグメントを解離させるシグナルが、BRAFからKSR2を介して伝達されるからである。KSRは調節性Raf分子とcisに相互作用して、MEKのコンホメーション切り替えを誘発し、別の触媒性Raf分子がtransに働いてMEKのリン酸化が促進されると、我々は考えている。 Full Text PDF 目次へ戻る