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地球:背弧海嶺下の対照的な地殻形成と急速なマントル変化

Nature 469, 7329 doi: 10.1038/nature09690

沈み込み帯の後ろにある背弧海盆の形成は、火山弧近傍の断裂に始まり海底拡大へと進行していく。この過程の間に、拡大する海嶺と火山弧は分離し、海嶺で噴出した溶岩は沈み込みに強く影響を受けた、沈み込むプレート由来の揮発物質濃度が高い状態から徐々に変化していくと予測されている。現在のモデルでは、海嶺に沿って形成された地殻は、その下に存在すると推測されている広い溶融帯が沈み込み帯の影響を強く受けたマントルから離れて移動するにつれて、急激にではなく、緩やかに変化すると予測している。本論文ではそれとは対照的に、東ラウ拡大中心における拡大軸の走向に直交する方向と平行な方向の地殻の性質の変化は大きく急激であり、これに対応して海嶺軸にメルトを供給するマントルの性質に大きな不連続性の存在が示唆されることを示す。海嶺軸が火山フロントからわずか5 km離れただけで、海底地形は浅部の複雑な火山地形から線状の深海底丘陵が支配的となる平坦な深海底へと変化し、上部地殻地震波速度が急激に20%以上増加して、重力異常とアイソスタシーは地殻が1.9 km以上薄くなっていることを示している。地殻の性質の急激な変化は海嶺に引きずられるマントルの急激な変化を反映しているので、大洋中央海嶺で推定されているような安定した三角形の上昇流領域はマントルウェッジの角では形成され得ないと考えられる。その代わりに、観測結果は、海嶺の上昇流帯では島弧に近づくにつれて水分を多く含んだ粘性の低いマントルが選択的に捕獲される動的過程の存在を示唆している。海嶺が島弧から遠ざかるにつれて、物質が上昇流帯から急速に放出される臨界点に達し、海嶺で形成される地殻の特性に急激な変化がもたらされる。

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