Letter 生態:気候変動の指標としての翼帯装着ペンギンの信頼性 2011年1月13日 Nature 469, 7329 doi: 10.1038/nature09630 2007年、「気候変動に関する政府間パネル」は、気候変動に対する海洋生態系の反応を緊急に評価する必要があることを強調した。南大洋の生態系は高緯度海域にあるため、地球温暖化による影響を強く受けると予測されている。この生産力の大きい海洋の食物連鎖の頂点に位置する、ペンギンなどの捕食者を統合的な指標として用いることは、気候変動が海洋生態系に与える影響の評価に役立つと考えられる。しかし、ペンギンの個体群動態に関して得られている情報の大半は、異論が多い翼帯(翼に装着する個体識別用バンド)の使用によって得られたものである。翼帯の影響が有害なものであることを示した研究結果もいくつかあるが、一部の短期的(単年)研究は有害でないと結論している。そのため、翼帯を大規模に使用する手法は今も継続されており、そうして収集されたデータセットが自然個体群に対する気候の影響の予測に使われている。今回我々は、自由に移動するキングペンギン(Aptenodytes patagonicus)への翼帯装着がその生存と繁殖を共に損ない、究極的には個体群成長率に影響することを示す。10年間に及ぶ長期的研究の間に、翼帯装着個体は非装着個体と比較して、産んだヒナの数が39%少なく、生存率も16%低かったことから、翼帯が大きな長期的影響を及ぼすことが明らかになり、ペンギンは最終的には翼帯に適応するという仮説の誤りが証明された。実際、調査した場所では10年を経過してもなお、翼帯装着個体は繁殖のために到着するのが遅れ、餌探しに長い時間がかかった。今回の主要な知見の1つは、気候変化(具体的には、海面温度および南方振動指数の変化)に対する翼帯装着個体の反応が非装着個体と異なっていることである。今回の結果は、翼帯の影響は長期的研究によってしか評価できない可能性や、生活史にかかわる主要な形質すべてが翼帯の影響を受ける可能性を示しており、翼帯を使用する研究手法が今なお継続されていることに疑問を投げかけるものだ。また、翼帯使用で得られたデータに基づく気候変動の海洋生態系への影響に関する我々の理解は、再考が必要だろう。 Full Text PDF 目次へ戻る