Letter 細胞:細菌の触媒性をもつ骨格構造を介するGTPアーゼ・キナーゼシグナル伝達複合体の構築 2011年1月6日 Nature 469, 7328 doi: 10.1038/nature09593 細胞内での情報伝達の忠実性と特異性は、酵素をシグナル伝達回路に集めて関連付ける足場タンパク質により制御されている。こうした回路は、各経路の構成成分を翻訳後に修飾する細菌エフェクタータンパク質により阻害されることがある。一方、病原体が酵素を集める骨格構造の形成によって直接的に高次のシグナル伝達ネットワークを構築する証拠が見つかりつつあるが、エフェクターの同定とその作用機構は十分に解明されていない。今回我々は、機能的スクリーニング法を用いて、腸管出血性大腸菌Escherichia coli O157:H7 III型のエフェクターであるEspGが細胞内膜の輸送調節因子であることを突き止め、ARF(ADP-ribosylation factor)GTPアーゼ群とPAK群(p21-activated kinase)がEspGの宿主側基質であることを示す。ARF6と複合体を形成したEspGの分解能2.5 Åでの結晶構造は、GTPアーゼ活性化タンパク質がかかわるGTP加水分解をEspGが阻害する仕組みを示しており、細胞内小器官の膜でのGTPアーゼシグナル伝達阻害の強力な機構が明らかとなる。さらに、PAK2の自己阻害性Iα3ヘリックスと複合体を形成したEspGの分解能2.8 Åでの結晶構造からは、EspGのこれまで知られていなかった触媒部位が明らかになり、細菌エフェクターによるキナーゼ活性化のアロステリック機構が考えられる。予想に反して、ARFとPAKはEspG表面に近接して配置されており、このことは、GTPアーゼ・キナーゼシグナル伝達複合体の機能的組み立てにより細胞事象を効果的に再プログラム化する「触媒性をもつ骨格構造」としてのEspGの役割を示している。 Full Text PDF 目次へ戻る