Letter 構造生物学:転写阻害タンパク質と結合した細菌RNAポリメラーゼの結晶構造 2010年12月16日 Nature 468, 7326 doi: 10.1038/nature09573 多サブユニットDNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAP)は遺伝子発現における転写の主要な酵素である。転写はいろいろな転写因子により調節されている。Thermus属に見つかるGre因子ホモログ1(Gfh1)は、よく保存された細菌の転写因子GreAに近縁のホモログであり、直接RNAPに結合することで、転写の開始や伸長を阻害する。RNAPとGfh1の結晶構造は個別に決定されているが、Gfh1による転写阻害の構造的な基盤はよくわかっていない。今回我々は、Gfh1と複合体を形成した高度好熱菌Thermus thermophilusのRNAPの結晶構造を報告する。RNAPの中央部の2つのモジュールの間には、通常ヌクレオシド三リン酸(NTP)の触媒部位への取り込み口として使われるチャネルが形成されているが、Gfh1アミノ末端のコイルドコイルドメインがそのチャネルを完全にふさいでいる。さらに、コイルドコイルドメインの先端がNTPのβ-γリン酸基の結合部位を占めている。以前に報告された伸長複合体と比較すると、中央のモジュールが互いに7度程度「ラチェット」運動しているので、NTPの入り口となるチャネルは広げられている。この「ラチェット状態」は、中央のモジュール間に新たに獲得された接触により生じる別の構造状態である。それゆえ、Gfh1の形状は、RNAPがラチェット状態を維持するのに適している。同時に、ラチェット運動は核酸結合チャネルを広げて、中央のモジュールどうしをつないでいるブリッジへリックスを変形させる。まとめると今回の結果から、NTPの結合を阻害し、RNAPを別の構造状態に固定することで、Gfh1が転写を阻害することが明らかになった。また、ラチェット状態はRNAPの移動や、転写の終結のような、転写のほかの局面と関係している可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る