Letter 進化:古くからある転写調節回路への新しい調節段階の挿入 2010年12月16日 Nature 468, 7326 doi: 10.1038/nature09560 遺伝子調節ネットワークの変化は、進化の過程で現れる新奇性の主要な供給源の1つである。本論文では、古くからある回路に新しい転写調節段階を挿入するという、特異な種類のネットワークつなぎ替え事象を報告する。進化の長い時間を経るうちに、調節因子とその標的遺伝子との古くからの直接的な結びつきが壊れて、間接的な結びつきに置き換わり、古い回路の総体的な論理は保たれたまま新たな挙動が出現するのだと我々は推測した。このつなぎ替えの例は、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、キラー酵母(Kluyveromyces lactis)、ヒトの一般的なカンジダ症病原菌であるCandida albicansという3種類の子嚢菌類の酵母で行った一連の実験によって明らかになった。これらの酵母はどれも、接合能力をもつ2つの型(aとα)とその接合によって生じる型(a/α)という3つの型の細胞をもち、a/αは接合能力をもたない。祖先の接合用回路では、2つのホメオドメインタンパク質Mata1とMatα2がヘテロ二量体を作り、これがa細胞とα細胞だけで発現されていて接合に必要な4つの遺伝子を直接抑制する。K. lactisの比較的新しい祖先では、回路の再編成が1回起こっていた。そのMata1–Matα2ヘテロ二量体は同じ4つの遺伝子(コア半数体特異的遺伝子[core haploid-specific gene]とよばれる)を抑制するが、現在は中間で働くRme1という調節タンパク質を介して間接的に抑制している。祖先の回路の全体的な論理(半数体特異的な遺伝子がa細胞とα細胞ではオン、a/α細胞ではオフになる)は保持されているが、つなぎ替えによって新しい表現型が1つ生じていた。すなわちK. lactisはS. cerevisiaeやC. albicansと違い、Rme1を用いて、接合するかしないかの決定機構に栄養状態のシグナルを組み込んでいる。 Full Text PDF 目次へ戻る